今回のいい寺は・・・
天竜川の流れる信州伊那街道・飯田の山寺です。
JR天龍峡駅から見た天竜川です。
諏訪湖を水源とする天竜川は侵食によって伊那谷を
形成して静岡県から遠州灘へと注ぎます
天竜川は木曽山脈と赤石山脈に挟まれて、昔から
「暴れ天竜」と呼ばれ、流域では水害に悩まされて
きました
特に伊那谷の出口付近(JR天龍峡駅)で川幅が
狭くなり、頻繁に洪水の被害を受けたそうです。
天竜川の侵食により河岸段丘になった平地には
田植えを終えた水田が一面に広がっていました。
太陽に照らされて、稲の緑が自然の恵みを
頂いている感じですね
斜面には飯田特産のリンゴ園
土地を有効に使っていますね。
長野のリンゴは蜜をたっぷり含んで美味しいです。
夕方でもみなさん畑仕事に精を出していました。
昔は何処でも見かけた風景ですね。
「暴れ天竜川」共存して大地の恵みを頂いて暮らしていく
エコな生活の原点ですね。
秋の収穫に向けてリンゴの木を育てています。
作物を育てるには、最初に手間を掛けること
それが肝心ですね。
伊那谷の街道沿いには、昔ながらの農家が点在して
います。
塀や土蔵の《なまこ壁》がとてもいい雰囲気ですね。
※なまこ壁は平瓦を貼り付け、格子型になった目地の
部分を漆喰や馬乗り型や四半型に盛り上げて塗ります。
水田と屋敷
絵になる風景があちらこちらにありました。
地域の環境や歴史によって建物に特徴がありますね。
屋敷の門や蔵、住居の造りが同じような農家が
多く見られました。
山間部では日照時間が短いため、生活空間に日が
当たるように工夫してあるのでしょう
そして、土地を有効に使うために住居は谷に並行した
向きに建てられていました
この天竜川の東岸に陽徳山・東照寺があります。
《東照》は東から昇る朝日を表します。
陽徳山は、作物が太陽の恵みで育つように私達の
心にも陽が当たり徳を頂きましょうという意味でしょう。
また、東の方角には薬師瑠璃光如来がみえるそうです。
1日の始まりに瑠璃光に照らされて日々の健康を願う
そんなお寺でしょうか!
鐘楼門は鐘楼部分の屋根の軒が深いため小さいながらも
立派に見えます。
自然災害と闘いながら土地を開いてきた先祖を祀る寺院。
この鐘を鳴らせば、先祖にも私達にも同じ音が響き、
この音を介して心がつながるのでしょうね
東照寺から山を登った所に立派な鐘楼門が建つお寺が
ありました。
蒼龍山・保壽寺です。
鐘楼門の扁額には「返照楼」と書かれていました。
《返照》とは夕日の光を表します
『回向返照』という仏教用語では、外に向かって探求しようと
する心を自分の内側に向け返して自分を照らすと説明
してありました。
一日を終えて自分自身を見つめなおそうという意味ですね!
鐘楼門には今にも跳びかかりそうな獅子。
愛嬌のある顔の彫り物がありました。
山に囲まれた境内でドウダンツツジの緑が浮雲のようです。
庭の手入れが大変でしょうね。
いつ訪れても変わらない境内・・・
維持することは、変えていく事よりも難しいでしょう。
そのおかげで、境内に入ると心が落ち着いて清々しい
気持ちになれます
苔むした境内には六地蔵が祀られていました。
長い年月のなかで風雨にさらされてきたのでしょう
風化して輪郭がわずかに残るだけですね。
この姿が、お寺の歴史の古さを感じさせます。
こんなお地蔵さんの方が、温和な感じで良いですね。
時間とともに苔むして変化していく姿。
私達も同じように一日一日、変わっていくのですね。
お寺から見える伊那谷と木曽山脈の風景です。
山の向こう、西の彼方には先祖がみえる《西方浄土》が
あります。
ここの梵鐘は、伊那谷の人々と西方の先祖に響き渡る
のでしょうね。
そして、伊那谷の西側に沈む太陽を眺めて、
一日の無事を感謝して先祖に手を合わせる場所なのでしょう
東照と返照・・・二つの光を頂けばご利益がありますよね。
次は、変わりゆく時代のなかで寺を守る姿についてです